〇伊賀産廃処分場問題(三重県)

◇2024年7月18日
 1.伊賀「産廃処分場問題」とは
  伊賀市に計画されている産廃処分場問題です。米子の産廃処分場反対運動の方から聞いたということで連絡を受けました。
  概要を記せば、伊賀環境サービス(株)が伊賀市下阿波地区に計画している安定型処分場で、面積約2.5ha,埋立容量約25万㎥
 です。
  驚いたことに、伊賀市には水道水源保護条例が定められており、処分場計画区域は、同条例の水源保護区域に指定されている
 区域なのです。また、同条例では、条例の対象事業として「産廃処理事業」が指定されており、対象事業の事業場のなかで
 「規制対象事業場」に指定されれば、水源保護区域内の立地は認められないのです。
  同条例の主な規定は次のとおりです。
   (定義)
   第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
    (1) 水源 法第3条第8項に規定する取水施設及び貯水施設に係る周辺地域で、水道の原水の取入れに係る区域をいう。
    (2) 水源保護区域 本市の水道に係る水源及びその上流地域で、市長が指定する区域をいう。
    (3) 対象事業 別表に掲げる事業をいう。
    (4) 規制対象事業場 対象事業を行う工場その他の事業場のうち、水道に係る水質を汚濁し、又は汚濁するおそれのある
      工場その他の事業場で、第12条第3項の規定により規制対象事業場と認定されたものをいう。
   (協議等)
   第12条 次に掲げる者は、あらかじめ市長と協議するとともに、関係地域の住民に対し、当該対象事業の計画及び内容を周知
    させるため、説明会の開催その他の措置をとらなければならない。
    (1) 対象事業を実施しようとする者
    (2) 対象事業の施設の構造若しくは規模の変更又は事業の範囲の変更(以下「対象事業の変更」という。)
      をしようとする者
   2 市長は、前項各号に規定する者(以下「対象事業実施予定者」という。)が同項の規定による協議をしない
    場合は、当該対象事業実施予定者に対し、期限を定めて当該協議をするよう勧告するものとする。
   3 市長は、第1項の規定による協議の申出を受け、水道に係る水質を汚濁し、又は汚濁するおそれがあると判断した場合に
    おいて、伊賀市水道水源保護審議会の意見を聴き、規制対象事業場と認定したときは、事業者に対し、その旨を速やかに通知
    するものとする。
   (建設工事等の着手の禁止等)
   第13条 対象事業実施予定者は、規制対象事業場に該当しない旨の通知があるまでは、対象事業の建設工事又は対象事業の変更に
    着手してはならない。
   2 市長は、前項の規定に違反して建設工事又は対象事業の変更に着手した者に対して、当該建設工事又は対象事業の変更の一時
    停止を命ずることができる。
  同条例を次に掲げておきます。
   伊賀市水源保護条例
  以上のことからわかるように、本件処分場が伊賀市水道水源保護条例の「規制対象事業場」に指定されれば、それだけで立地が
 不可能になるのです。
  同条例では「対象事業」として「産廃処理業」が指定されているのですから、なぜ本件処分場が「規制対象事業場」に指定されない
 のか不思議ですが、「規制対象事業場」の指定に関しては、今後、水道水源保護審議会に諮られる予定です。
  市民感覚では「指定されるのが当然」ということになりますが、廃棄物処理法上、安定型処分場は水質汚染をもたらさない、という
 建前になっていますので、必ず指定されるとまでは言えません。
  地元で本件処分場設置に反対する市民が作成したレジュメ「伊賀市安定型処分場建設をめぐって」を次に掲げます。
   「伊賀市安定型処分場建設をめぐって」
  とてもよくできたレジュメで今後の反対運動の大きな力になると思います。
  レジュメで紹介されている千葉地裁木更津支部平成17年5月12日判決を次に掲げます。
   千葉地裁木更津支部平成17年5月12日判決
  この判決は、千葉県富津市に計画された安定型処分場の建設差し止めを認めた判決です。安定型処分場が、廃棄物処理法上の
 建前としては地下水汚染をもたらさないことになっていますが、実態としては地下水汚染をもたらすことを認め、人格権や水利
 権・漁業権の侵害になるとして建設差止めを命じたのです。
  富津市には、水道水源保護条例はありません。その富津市に計画された安定型処分場が建設差止めになったのに、水道水源保護
 条例が定められている伊賀市の水源保護区域に計画されている安定型処分場が建設差止めにならなければ、実に不可解といわざる
 を得なくなることでしょう。
  伊賀市水道水源保護審議会の審議を注視していきましょう。