〇採捕許可に基づく漁業の性格及び漁具の強制撤去問題(香川県)

 1.争いの経緯
   香川県では、河川工事の際、地元建設業者が漁民に助成金を支払っていましたが、1984年9月県議会で前川知事(当時)が「淡水漁業者への採捕許可
  は漁業権とは性質を異にする。建設業者が補償金的な性格の金銭を支出するのは適当でない」旨の答弁を行ない、香川県の統一見解としました。
   そのため、坂出・綾歌淡水漁協(西岡健明組合長)と組合員10名が香川県と大手建設業者を相手取り、高松地裁丸亀支部に工事差止めの仮処分を申請、
  また、西岡健明氏ら6名が香川県を相手に約1083万円の損害賠償を請求する訴訟を提訴しました。
   しかし、その後、いずれも訴訟者自らによって取り下げられました。法廷で争うのではなく、円満な話し合いによって解決する道を選ぼうとの考えから
  取り下げられたようです。以下に、取下げに際して西岡健明氏が綴られた、心を打つ文書を掲げます。
   西岡健明氏「社会へ真実を訴える」
   しかし、その後1990年には、追い打ちをかけるように、大東川で操業中の西岡健明氏の漁具が、補償も支払われないまま、香川県によって強制撤去さ
  れました。
   以上の香川県の強硬な姿勢は「採捕許可による漁業は漁業権ではない」との見解に基づくものです。

 2.西岡健司氏からのお手紙と私見の送付
   2017年夏、綾歌淡水漁協の現組合長西岡健司氏(西岡健明氏のご子息)からお手紙と分厚い資料が大学宛に送られてきました。西岡健司氏は、既に故人
  になられた西岡健明氏の遺志を継いで、この問題を世に問おうと健闘されているのでした。夏休みが明けて秋に連絡を取ることができましたが、当時、拙著
  『漁業権とはなにか』の執筆で多忙を極めていたため、ようやく正月休みになって資料に目を通すことができました。
   資料を通じて香川県が漁業権について間違った見解を持っていることがわかりましたので、私見をまとめて西岡氏に送りました。以下に掲載します。
   私見「内水面漁業制度に関する香川県の見解の誤りについて」

 3.2018年7月23日の電話
   私見をお送りした後、西岡氏と今後の取組みについて話しましたが、西岡氏が私見を元に地元で取り組んでみるとのことでしたのでしばらくご無沙汰しま
  したが、2018年7月23日に久しぶりでお電話して近況を伺ったところ、私見を香川県に渡したところ、県が受け止めてくれて、拙著を取り寄せて勉強してく
  れているとのことでした。大変嬉しいことで、勉強してもらえばもらえるほど私見を理解してもらえるはずです。
   電話で西岡氏にホームページへの掲載及び実名の表記を打診したところ、「私は公明正大に、すべてオープンにして進めます」とのことで、ホームページ
  に掲載することにした次第です。
   西岡氏のような公明正大な姿勢が最も強く、また理解や支持も得られると思います。
   香川県が、今後、西岡健明氏及び西岡健司氏の主張を認め、両氏の悲願が実ることを祈りつつ、今後も本件の経緯を紹介していくことにします。