水俣巨大風力発電計画(熊本県)

◇2023年3月29日
 1.水俣巨大風力発電計画の報告とコメント
  戦後の公害問題の原点、水俣病が発生した熊本県水俣市で巨大風車計画が持ち上がっています。
  3月18日、最首塾(下掲のサイトを参照)で中地重晴氏(熊本学園大学水俣学研究センター)と中村雄幸氏(ちょっと待った!
 水俣風力発電の会)による報告(会場+Zoom)がありました。
 最首塾
  1980年代の後半頃、最首悟団長の調査団に属しており、水俣を数度訪ねて、ヘドロ埋立のこと等を調べたことがあります。
  当時、中村雄幸氏とも何度かお会いしましたが、約30年ぶりで懐かしくお顔を拝見しながら、報告を拝聴しました。
  報告によれば、巨大風車の計画予定地は、大関山及び鬼岳周辺(石飛,湯出)で、風車建設により、大関山にある水源涵養保安林
 及び土砂流出防備保安林への影響、寒川水源等の水源や水俣川・湯出川にある無数の堰(水利)への影響。湯の鶴温泉への影響、
 水俣川でのアユ捕りへの影響等が出ることが懸念されており、2020年8月9日に「ちょっと待った!水俣風力発電の会」を創って
 署名活動等に取り組んでいるのだそうです。
  水俣市周辺の巨大風力発電計画は、次のとおりです。風力発電としては日本一の規模になるそうです。
  1.(仮称)大関山風力発電事業
   ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社
   計画発電量63,000kW、4,200kW×15基
  2.(仮称)肥薩ウインドファーム
   電源開発株式会社 Jパワー
   計画発電量129,000kW、 4,300kW×30基
  3.(仮称)出水水俣ウインドファーム
   日本風力サービス株式会社
   計画発電量68,400kW、 3,450~4,200kW×19基
  合計すると計画発電量 260,400kW
    4,300kW 64基(約10万世帯分の電力量)
  4,300kWの風車の諸元は、風車の中心までの高さ90m、羽根の長さ60m、土台500㎡、設置範囲2,000~3,000㎡です。
  風車中心まで90m、羽根の長さ60mですから、羽根の先端は、高さ150mにも及びます。熊本城の高さが29.5mですから、
 大変な高さになり、それを支えるための杭打ちも深部にまでおよぶことになるでしょう。

  以上のような報告の後に、概略、次のようなコメントをしました。
  環境アセスメントでは、規模を少し小さくするとか、少し形を変える程度の成果しか得られず、事業を止めるには、住民・
 農漁民の持つ権利に基づいて闘うことが重要です。
  巨大風力発電計画で脅かされているのは、水利権、温泉権、漁業権等の入会権的権利(入会権に類似した権利)であり、それ
 らの権利を侵害する事業を進めるには、権利者からの同意取得、及び権利者への補償が必要です。そこに着目して、権利者が
 事業に同意しなければ、事業は止められます。
  このコメントに、中村雄幸氏が大変興味を持たれましたので、その後、電話・メールで連絡を取って、拙著『権利に基づく闘い』
 を送りました。また、入会権的権利が、江戸時代以来、日本の環境を保全するうえで大きな役割はを果たしてきたこと、及び、今後
 の日本の環境保全の上でも、入会権的権利等が重要な役割を果たし得ることを論じた拙著『持続的開発と生命系』は、手元にないので
 中村さんがネットで注文して下さることになりました。
  その後、書庫を整理したところ、拙著『公共事業はどこが間違っているのか?ーー入会権・漁業権・水利権』の在庫が見つかりまし
 たので、追加送付する予定です。
  入会権的権利は、実は、地域が持つ権利なのです。地域に住み、地域の自然に関わりながら生活する住民たちの集団(入会集団)が
 権利を持つと同時に、その構成員各自もまた権利を持つような共同所有である「総有」の権利なのです。「総有」の権利は、地域の
 自然に関わりながら生活しているからこそ持てる権利であり、地域を離れれば、あるいは地域に住んでいても地域の自然との関わり
 がなくなれば、権利者(入会権者)としての資格を失うのです。「地域が持つ権利」と呼んだ所以です。
  総有という共同所有は、近代法にはありません。近代法は、都市国家古代ローマ帝国に源を持つローマ法に由来するからです。他方、
 中世の農村社会に淵源を持つのがゲルマン法であり、総有は、ゲルマン法の共同所有なのです。
  ちなみに、水俣でよく使われる言葉の「もやい」とは、「共同して事をすること」の意味で、「総有」に由来する言葉なのです。
  持続的開発が世界的な課題になっているいま、水俣病に苦しまされてきた水俣で、総有の権利に基づいて巨大風車計画を止めると
 ともに、総有の権利を基盤にした地域おこしが構想されるならば、大変意義のあることになると思います。

◇2023年5月1日
 1.水俣支援東京ニュースNo.105と「水俣に風車はいらない」のチラシ
  3月18日の報告会の記録が掲載された水俣支援東京ニュースNo.105(2023.4.25)と「水俣に風車はいらない」のチラシを送って
 いただきましたので、次に掲載します。
  水俣支援東京ニュースNo.105
  「水俣に風車はいらない」のチラシ

◇2023年5月21日
 1.水俣風車説明会の様子を伝える新聞記事
  水俣病を告発する会の久保田好生さんから水俣風力発電の説明会の様子を伝える新聞記事(熊本日日新聞2023.5.20)を送っていた
 だきましたので、次に掲載します。
  風力発電 懸念相次ぐ(熊本日日新聞2023.5.20)