〇川辺川ダム問題(熊本県)1999年~
◇川辺川ダム問題との関わり
川辺川ダム問題には、1999年に八代市民T氏から依頼を受けたことをきっかけに、十年余りにわたって、どっぷりと関わりました。
テーマは「漁業権でダムを止める」でした。大変な苦労をしましたが、川辺川ダム建設を止めることができ、更に、荒瀬ダムの撤去も勝ち取ること
ができました。
川辺川ダム・荒瀬ダムへの取り組みは、共に苦労した三室勇・木本生光・小鶴隆一郎の各氏との共著『よみがえれ!清流球磨川』(緑風出版,2011年)
にまとめていますが、川辺川問題に関連した資料は膨大ですので、以下、主要なものを徐々に掲載していきます。[2020.12.4記]
◇川辺川問題関連資料(年月日順)
・1999年2月25日朝日新聞記事「川辺川ダム 着工へ大詰め」
1999年2月時点で「着工へ大詰め」、「漁協との補償交渉が解決すれば、新年度からダム本体工事に着工予定」と記されています(一部スキャナミスあり)。
1999年の八代市民T氏からの依頼も、『よみがえれ!清流球磨川』の「あとがき」に書きましたように「いろんな手立てでダムの進捗を止めようとしてきた
けれど、どれも駄目でした。1,2カ月進捗を遅らせていただくだけでも結構です。あとは漁業権しかありませんのでお願いします」ということでした。
いまから振り返れば、ダム反対漁民の健闘がダム着工を遅らせ、勝利につながったことが分かります。
しかし、それだけに、ダム反対漁民の中心メンバーへの圧力・攻撃は凄まじいものでした。圧力・攻撃は、ダム容認派からのみならず、実は、私利私欲を図る
一部のダム反対派からも凄まじかったのでした。
『よみがえれ!清流球磨川』の共著者のお三方の存在がなければ川辺川ダムの中止は決して実現しなかったことは間違いありません。
朝日新聞1999.2.25
・1999年7月28日朝日新聞記事「収用は不利」
収用についての本質に関わる記事です。篠島真哉記者が、当時、病院ベッドで寝ておられた浜本幸生氏の取材も行なっています。
朝日新聞1999.7.28
・1999年8月4日講演レジュメ
学習会は1999年から数年にわたり数えきれないほど持ちましたが、初めての学習会のレジュメを次に掲げます。
1999.8.4講演レジュメ
・1999年12月2日
水産庁で「漁業法の神様」と呼ばれた浜本幸生氏が1999年11月4日に逝去されましたが、朝日新聞の篠島記者が追悼記事を12月2日に掲載してくれました。
1999.12.2浜本幸生さん追悼記事
・2000年3月8日漁協の二重の性格
球磨川漁協の三室勇理事宛てに送った「漁協の二重の性格」についての文書です。漁業権・漁業補償を理解するうえで重要なので掲載します。
漁協の二重の性格
・2002年1月31日人吉新聞記事
人吉新聞2002.1.31に掲載された拙稿です。「共同漁業権の収用」の本質について簡潔にまとめています。
収用は国土交通省の自殺行為
・2002年2月12日熊本日日新聞記事
熊本日日新聞2002.2.12に掲載された拙稿です。2002年1月31日人吉新聞記事と同趣旨です。
収用は国土交通省の首を絞める
・2002年3月2日読売新聞インタビュー記事
読売新聞記者による私へのインタビュー記事です。共同漁業権の権利者について簡潔に分かりやすくまとめられています。
読売新聞インタビュー記事
◇熊本県収用委員会関連資料(年月日順)
国交省が川辺川ダムに関する漁業権収用の裁決を熊本県収用委員会に申請し、収用委員会における審議が2002年4月から始まりました。
審議には、漁業権の免許を受けている球磨川漁協(代理人竹中潮弁護士)のほか、「権利を主張する者」として、球磨川漁協組合員及びその代理人が参加し、
国交省との論争や互いの論争を展開しました。
「権利を主張する者」の代理人としては、三室勇氏,木本生光氏,小鶴隆一郎氏を初め数百名のダム反対派組合員から委任された私、及び、毛利正二Y,T,H
の4名の組合員から委任された弁護士(板井優,松野信夫,中尾英俊氏ら)が参加しました。「権利を主張する者」が二つのグループに分かれたのは、ダム
反対派組合員のうち前記4名が弁護士のほうに委任したためです。
以下、収用委員会に提出された主な意見書等を掲載します。
・2002年4月2日条文説明要求書
収用委員会での審議にあたって真っ先に提出した文書です。お互いに、相手に対して、自らの漁業法解釈に基づいて漁業法の条文を説明しなさいと要求
しあうことにしようと提言して、収用委員会がその提言を認めたので、国交省に対して要求したものです。とても効果的で成果大でした。
詳しくは、拙著『海はだれのものか』(日本評論社,2010年)参照。
2002.4.2条文説明要求書
・2002年4月28日熊本意見書
収用委員会の冒頭に提出した私見のベースとなる意見書です。
2002.4.28熊本意見書
・2002年4月30日国交省意見書
2002.4.40国交省意見書
・2002年5月14日付け意見書
2002年4月30日国交省意見書に対する2002年5月14日付け意見書「国交省意見書への反論」です。
2002.5.14国交省意見書への反論
◦2002年7月15日提出分
・ 2002.7.15国交省見解への意見書
・ 2002.7.15国交省見解への反論
・ 2002.7.15竹中潮意見書への反論
・ 2002.7.15毛利正二ら代理人の見解について
◦社員権説の意見書
国交省から依頼されて二名の学者が社員権説の意見書を収用委員会宛て提出しました。
山畠正男氏と佐藤隆夫氏です。二人の意見書を次に掲げます。意見書への私の反論は後に掲げます。
・2002年7月17日山畠正男意見書
2002.7.17山畠正男意見書
・2002年7月22日佐藤隆夫意見書
2002.7.22佐藤隆夫意見書
◦2002年7月30日提出分
社員権説の意見書を収用委員会に提出した山畠正男・佐藤隆夫両氏宛てに条文説明要求書を提出しました 。
どんな見解でも自説を書くのは容易ですが、法律の条文を自説に基づいて説明することは大変です。あまりにも非論理的な説を述べている両氏に対して、条文
説明要求書を出したことは、きわめて有効でした。両氏とも全くといってよいほど答えられませんでした。
2002.7.30山畠正男佐藤隆夫氏への条文説明要求書
◦2002年8月2日提出分
毛利ら代理人が、総有説に立つと言いながら、それと矛盾した論(たとえば、「組合員集団が入会集団」という論)を展開しているので、収用委員を混乱させ
る恐れを懸念して、毛利ら代理人にも条文説明要求書を提出しました。
2002.8.2毛利ら代理人への条文説明要求書
同じダム反対派の論を攻撃するのは如何か、という批判もありましたが、学者の見解は、いわば自分の命を懸けたほど重たいものですから、異なる見解とは命
がけで闘わなければなりませんので、また、毛利ら代理人の見解は総有説を混乱させて、その正しさを理解してもらううえで妨げになりますので、提出しました。
条文説明要求書に対して、山畠・佐藤氏からは回答があり、国交省も後になって回答してきましたが、毛利ら代理人からの回答はありませんでした。
◦2002年8月22日提出分
・国交省の条文説明についての批判
国交省の条文説明要求書についての回答を批判する意見書を提出しました。
意見書の結論として、次のように書いています。
以上のように、7月17日付け意見書によっては、4月2日付け条文説明要求書10項目について何ひとつ説明されていない。したがって、国土交通省の社員権
説が誤った法解釈であることは明らかである。
7月25日収用委員会において、以上の反論を口頭で述べたところ、国土交通省は「説明したと思うので、これ以上の議論はしない」と答えた。しかし、上述
のように、7月17日付け意見書における回答が説明になっていないことは明らかであるから、「説明したと思うので、これ以上の議論はしない」との答弁は、
「説明できません」と答えたに等しく、社員権説が誤りであることを自ら認めた答弁にほかならない。
国交省の条文説明批判
・2002年7月17日山畠正男意見書について批判した意見書を提出しました。
山畠正男意見書批判
・2002年7月22日佐藤隆夫意見書について批判した意見書を提出しました。
佐藤隆夫意見書批判
・水口憲也氏(東京水産大)から提出された意見書について批判した意見書を提出しました。
同意見書を提出した理由を次の通り述べています。
水口氏は、漁業法についても、漁民の権利と埋立・ダムの関係についても、多くの誤解をしている。また、定義の明確でない概念を用いたり、概念を誤用した
り、論理や根拠なしに結論だけを述べたりしている。そのうえ、そもそも本件のテーマである共同漁業権の帰属についても、社員権説、それも支離滅裂な社員権
説を述べている。
水口意見書批判
・竹中潮氏(球磨川漁協顧問弁護士)から提出された意見書について反論した反論書を提出しました。
竹中潮氏への反論書
◦2002年9月9日提出分
・熊本意見書
2002年8月26日収用委員会において毛利正二ら代理人板井弁護士が「補償額に通損補償が含まれていない。追加するか、追加しない限りは却下せよ」と主張した
ことについて意見書を提出しました。
2002年9月9日付け熊本意見書
◦2002年11月15日提出分
・熊本意見書
2002年10月10日付け国土交通省意見書(共同漁漁権の帰属についての意見書)及び9月25日収用委員会における論点(毛利正二ら代理人の「影響補償を含んでい
ないから裁決申請を却下せよ」との主張)に関し、意見書を提出しました。
2002年11月15日付け熊本意見書
◦2002年12月12日提出分
2002年11月15日に提出した熊本意見書を補足し、裏付ける意見書として、「収用損失」(収用自体に起因する損失)と「事業損失」(公共事業の施行に伴う損失)と
いう概念を用い、次のことを解説しました。
①事業損失を収用の際の損失補償に含めるべきか否かについては、含めるべきとする肯定説と含めるべきでないとする否定説との間で、古くから論争が繰り広げられ
てきたこと。
②行政解釈は一貫して否定説に立っており、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」もまた否定説に立っていること。
③共同漁業は、共同漁業権を収用されても、本来、免許に基づかなくても営める自由漁業なので、収用後も営むことができること。
④したがって、共同漁業が営めなくなることに対する消滅補償は事業損失に対する補償であり、収用時に支払うことは不可能で、収用後に補償契約を交わして支払う
しかないこと。
◦2003年1月8日提出分
・熊本意見書
共同漁業権は「関係漁民集団が総有する権利」であるが、国は「漁協の権利であり、組合員は社員権を持つに過ぎない」、毛利ら代理人は「組合員集団が総有する
権利」との誤った見解を持っています。
熊本意見書では、漁業法上の概念及び漁業法の規定に基づいて、「関係漁民集団が総有の権利」であること及び他の二見解が誤りであることを明らかにしています。
同意見書は、Wordファイルの意見書本文と、その内容を表の形にまとめたExcelファイルから成り立ちます。
2003年1月8日付け熊本意見書
表 共同漁業権の入会権者
◦2003年5月14日提出分
・条文説明要求書2
河川漁協においては、漁業者・漁業従事者以外の「水産動植物の採捕又は養殖をする者」(「採捕者」)をも組合員に含めているが、漁業法8条1項においては、「漁
業を営む権利」を有する者を漁業者及び漁業従事者であるものに限定し、採捕者の組合員は含まれない。この点について、国交省及び毛利正二ら代理人の説明を要求し
ました、
条文説明要求書2
◦2003年6月20日提出分
・熊本意見書
平成15年5月14日付け条文説明要求書2に対し、国土交通省からは何の回答もなく、毛利正二ら代理人中尾弁護士からは平成15年5月22日付け回答があった。
そのため、中尾弁護士の平成15年5月22日付け回答について熊本意見書及び関連図表を提出しました。
2003年6月20日付け熊本意見書
2003年6月20日付け熊本意見書付表
2003年6月20日付け熊本意見書付図
◦2003年9月16日提出分
・熊本意見書
漁業権には存続期間の定めがあり、共同漁業権の存続期間は10年である。
本件において収用・使用の対象とされている権利は、球磨川漁協に免許されている内共第6号共同漁業権であるが、この権利は、2003年12月31日をもって消滅
する。2004年1月1日には新たに免許がなされる予定であるが、1月1日に免許される共同漁業権は、本件において収用・使用の対象とされている権利とは全く別
物であり、したがって、2004年1月1日以後になされる収用委員会裁決が却下裁決となるべきである、との意見書を提出しました。
2003年9月16日付け熊本意見書
◦2003年10月27日国交省意見書
国交省が2003年9月16日付け熊本意見書に対して反論する10月27日付け意見書を出してきました。
2003年10月27日付け国交省意見書
◦2003年12月12日提出分
国交省2013年10月27日意見書に対して反論する12月12日付け熊本意見書を提出しました。
2003年12月12日付け熊本意見書
熊本県収用委員会における国交省との意見書のやりとりは以上のとおりです。
〇熊本意見書全
収用委員会に提出した熊本意見書全部のファイルを次に掲げます(上掲のものも含みます)。
2002年4月~2003年1月に作成したもので、1頁40字×40行で117頁(400字詰めで約470枚)に及びます。
熊本意見書全